正社員と派遣社員、どちらがおすすめなのか。
これはなかなか難しい質問です。
私はこれまで、正社員として働いたこともあれば、技術系派遣としてさまざまな現場で働いたこともあります。一般的な派遣の仕事も経験しました。
そして本業とは別に、副業として個人事業にも長く取り組んできました。
全部経験したうえで「結局どれがおすすめ?」と聞かれたら、身もふたもない答えになります。
人による。
ただ、それでは記事にならないので、今回は「技術をどう身につけるか」「副業とどう両立するか」という視点に絞って、それぞれの働き方について私が感じてきたことを書いてみます。
やりたい技術が決まっているなら正社員は強い
技術者として考えたとき、正社員の大きなメリットは、一つの分野をとことん深掘りできることだと思います。
特に大企業では、その会社でなければ経験できない仕事があります。
自動車の開発などは典型的でしょう。
一台の自動車を世に送り出すために、膨大な数の技術者が関わっています。
その中で正社員は、自分が担当する分野について大きな責任を負いながら何年も経験を積んでいきます。
そうすると、とんでもなく詳しい人が生まれます。
いわゆるプロ中のプロです。
派遣社員として自動車メーカーに入ることもできますが、基本的には正社員の仕事を支える立場になります。
もちろん例外はあります。
私は「これ、正社員と同じレベルの仕事をしているのでは?」と思うような派遣社員も見てきました。
ただ、そんな人を見ると別の意味でつらくなります。
やっている仕事は正社員並みなのに、年収がまじめに2倍くらい違うことがあるからです。
会社の根幹に関わる仕事をして、責任を持ち、その分野を極めたいのであれば、やはり正社員は強いと思います。
ただし、これは同時に怖さでもあります。
狭く深く掘るということは、掘る場所を間違えたときのダメージも大きいからです。
興味を持てない仕事に配属され、そこで何年もキャリアを積むことになったらどうするのか。
そもそも自分が何をやりたいのか分からない。
そんな人にとっては、正社員の「深く掘れる」というメリットが、そのままデメリットになる可能性もあります。
何の技術を身につけたいか分からないなら技術系派遣もあり
そこで選択肢になるのが技術系派遣です。
私は、何か技術を身につけたいけれど「自分はこれを極める」とまでは決まっていない人なら、技術系派遣という働き方はありだと思っています。
いろいろな会社、いろいろな仕事を経験できるからです。
実際に仕事をしてみて、
「これは面白い」
「これは自分には合わない」
と判断できます。
求人票を眺めたり、学校で勉強したりするだけでは分からないことを、実際の仕事を通じて試せるわけです。
そして、やりたいことが見つかったら、そこから深掘りしていけばいい。
……と言いたいところなのですが、現実はそんなに簡単ではありません。
技術系派遣は放っておくと「広く浅く」なりやすい
技術系派遣で長く働いた私が感じる大きな問題がこれです。
普通に頑張っているだけでは、技術が広く浅くなりやすい。
自分のやりたい技術が見つかったからといって、次もその仕事ができるとは限りません。
派遣なのですから、そもそも案件がなければ仕事がありません。
たとえば、
「私は絶対にロボティクスをやる!」
と決意したとします。
気持ちは素晴らしい。
でも、自宅から通える範囲にちょうどいい案件がなければどうにもなりません。
この問題を解決する方法は、大きく二つあると思います。
一つは、全国転勤を受け入れて仕事のある場所へ自分から移動すること。
もう一つは、やりたいことの中でも案件数の多い技術を選ぶことです。
たとえば「自動車関連の技術者になる」と決めれば、地域によってはかなり多くの案件があります。
ところが対象を狭く限定するほど、当然ながら選べる案件は減っていきます。
技術系派遣は自由にキャリアを選べそうに見えて、実際には案件にキャリアを左右される。
これは長くやってみて感じた難しさです。
私は「広く浅い技術者」になった
では私はどうなったのか。
見事に広く浅くなりました。
正社員への転職を目指す人には、あまりおすすめできる状態ではありません。
一つの技術を何年も追い続けてきた人なら、
「私はこれができます」
と強くアピールできます。
一方、いろいろな仕事を経験してきた人間は、
「あれもやりました。これもやりました。あっ、それも少し分かります」
となりやすい。
よく言えば何でもできる。
悪く言えば、どの分野でもプロ中のプロには勝てない。
ただ、私はこのキャリアを後悔していません。
長く続けていると、面白いことが起こり始めたからです。
バラバラだった技術が、後になってつながってくる
以前、CADデータを変換する仕事をしたことがあります。
CADを扱う仕事ではありますが、設計の仕事ではありません。
その仕事だけを見れば、設計者としてのキャリアに直接つながるようには見えません。
ところが、その後に設計の仕事で別の現場へ行きました。
すると、そこにCADデータの変換で困っている人たちがいるわけです。
私は以前、それを仕事としてやっていました。
当然、分かります。
こういう経験が何度もありました。
そのときには、
「こんな経験、将来何の役に立つんだろう」
と思っていたことが、何年か後になって別の仕事とつながる。
一つひとつの技術では専門家に勝てなくても、複数の分野をまたいで考えられる。
これはこれで面白い能力です。
ただし、ここまで来るには相当な数の「広く浅く」を積み重ねなければなりません。
言ってしまえば、
中途半端を極める。
そこまでいけば、結局それも一つのプロなのかもしれません。
とはいえ、かなり遠回りなキャリアです。
だから「私がうまくいったからおすすめですよ」とは言いません。
一般派遣は技術より「時間」に価値があると思う
一般的な派遣については、また少し考え方が違います。
仕事そのものでスキルアップしようとすると、どうしても天井は低くなりやすいと思います。
しかし、別のメリットがあります。
時間をコントロールしやすいことです。
残業の少ない仕事を選びやすく、派遣会社によっては副業も禁止されていません。
だったら本業だけで勝負しなくてもいい。
派遣で生活費を稼ぎながら、残った時間で副業を育てる。
私は長い間、この働き方をしていました。
ただし、経験者として一つ言っておきたいことがあります。
私は派遣+副業という働き方を積極的にはおすすめしません。
「派遣なら副業しやすい」は本当。でも楽ではない
派遣なら残業のない仕事を選んで、空いた時間で副業できる。
理屈としてはその通りです。
実際、私はそうしました。
当時はメルマガを発行しながら、アフィリエイトにも取り組んでいました。
朝、出勤する前にメルマガを一本書いて配信。
通勤電車の中ではアフィリエイト案件を選定。
昼休みにはスマホでまたメルマガを書いて配信。
仕事が終わって家に帰ったら、今度はブログを書きます。
ブログは毎日1記事。
それを自分に課していました。
1日も欠かさず続けました。
期間は3年間です。
今振り返っても、よくやったと思います。
そして、ものすごく疲れました。
派遣だから残業が少ない。
だから副業する時間がある。
確かにその通りなのですが、時間があることと、その時間を毎日副業に投入できることはまったく別の話です。
「今日は疲れたからやめよう」
を繰り返していたら何も積み上がりません。
だから私は、派遣+副業を「背水の陣」のような働き方だと思っています。
時間をコントロールできて、自分で自分を動かし続けられる人なら一つの選択肢にはなる。
でも、あのストイックな生活をもう一度誰かにすすめたいかと聞かれたら、私はすすめません。
ただし、あの3年間が自分にとって、とてつもないスキルアップになったことも事実です。
正社員だから副業できないわけでもない
もちろん、副業をするために派遣社員になる必要はありません。
正社員をしながら副業することだってできます。
むしろ安定した収入を得ながら副業を育てられるのですから、条件さえ整えば非常に強い働き方だと思います。
ただ、私がこれまで見てきた感覚では、大きな会社の正社員ほど副業に興味がない人も多いように感じました。
これは考えてみれば当然なのかもしれません。
本業で十分な収入が得られる。
会社の中には大きな仕事がある。
そのままキャリアを積んでいけば生活にも困らない。
だったら、仕事が終わってからさらに働こうとは思わないでしょう。
ハングリーでいなくても十分に生活できる。
それはある意味、とても幸せなことなのかもしれません。
私はそういう生き方を選びませんでしたが、それが間違っているとも思いません。
結局、正社員と派遣社員のどちらがおすすめなのか
ここまで書いてきたことを、かなり乱暴にまとめます。
やりたいことが決まっているなら正社員。
会社だからこそできる仕事に入り込み、その技術を徹底的に深掘りする。プロ中のプロを目指すなら、とても強い環境です。
技術を身につけたい。でも何を専門にするか分からないなら技術系派遣。
いろいろ経験しながら自分の方向を探せます。ただし、放っておけば広く浅くなるので、その先を意識する必要があります。
そして意外かもしれませんが、
特にやりたいことがなく、それを積極的に探すつもりもないなら正社員。
これも私はありだと思います。
会社という環境の中で経験を積み、収入やキャリアを安定させていけばいいからです。
一方、
とりあえず収入を確保しつつ、仕事以外に時間を使いたいなら派遣。
これも選択肢です。
ただし将来のキャリアを会社任せにはしにくいので、資格でも勉強でも副業でもいい。空いた時間で何かを積み上げる意識は持っていたほうがいいと思います。
結局、どれが正解かは人によります。
若い頃の私は「何かのプロ」になりたかった
私は学生時代、父親から何度も言われました。
「とにかく大きな会社の正社員になれ」
当時の私は、そういう人生をあまり望んでいませんでした。
子供の頃から独立心が強く、漠然と「何かのプロになりたい」と思っていました。
最初に夢見たのは漫画家。
その後はミュージシャン。
ありがちな話ですが、親から言われた方向とは反対へ行きたかったのだと思います。
そして実際、私の人生は父親が望んだものとはかなり違うものになりました。
ただ、今になって思うことがあります。
父親の言う通り大企業の正社員にならなかったことが問題だったわけではありません。
漫画家を夢見たことが間違いだったわけでもない。
ミュージシャンになりたかったことも、独立したかったことも間違っていません。
問題だったのは、もっと単純なことでした。
私は若い頃、どこか本気で生きていなかった。
どの道を選んでも、本気でやったほうがいい
グローバル企業の正社員になりたいのなら、小さい頃からしっかり勉強すればいい。
プロになりたいのなら、自分に厳しく技術を磨けばいい。
独立したいのなら、そのために必要なことを学び、行動すればいい。
当たり前のことです。
ところが若い頃の私は、
「会社員にはなりたくない」
「何かのプロになりたい」
と思う一方で、ではそのために誰よりも努力していたのかと言われれば、そうではありませんでした。
今になって考えると、正社員か派遣社員かなんて、その次の話なのかもしれません。
正社員を選んだっていい。
派遣社員を選んだっていい。
副業したっていい。
独立したっていい。
途中で道を変えたっていい。
どの道を選ぶにしても、本気で生きたほうがいいに決まっている。
正社員、派遣社員、副業、個人事業。
いろいろな働き方を経験してきて、結局たどり着いたのは、そんな当たり前の答えでした。
若い頃は、それがなかなか分からない。
困ったものです。
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